ショウ・スズキ フロムオキナワ

よろしくお願いします

絶対に読めない絵本

 

絶対に読めない絵本とは何か…

 

 

と…まずはその前に、僕は昭和生まれの男です。

 

男は外で泣くものではない、という教育を受け

そういう価値観の中で育ち

その教えが体に染みついて離れない。

 

じゃあ、なんだ?

お前は外で泣きたいのか?

 

と問われたら、

 

「子どものように、おもいきり泣きたい」

 

と答えたい。

 

涙を流すとスッキリする事は科学的にも

証明されていますよね。

 

何より泣きたい気持ち、自分の気持ちに

蓋をすることが、年々我慢ができなくなっている。

歳をとると体力が落ちてワガママになるのではないか。

我慢には相当の体力がいるのだ。

 

 だがやはり、そうはいえ、今後自分が

外でおいおいと泣けるかというと、

難しい気がする。

人目を気にしてしまうから。

 

人目を気にする事にも、年々我慢ができなくなっているから、

いつか外で泣ける日も来るかもしれない。

 

しかし今のところ、自分がもしも外でおいおいと泣いて

周りの人から心配される(あるいは好奇の目で見られる)

というシーンを想像すると、やはりちょっと厳しいものがある。

 

そういう想像力も欠如したころに

僕は外でもおいおいと泣けるかもしれない。

人目を気にするという事は、

自分がどう見られるかを想像する行為なのだ。

(どう見られているかの正解は、どうも見られていない、

が正解だ。あっちはあっちで、こっちがどう見ているか

を心配しているが、こっちはこっちの心配しかしていないのだから)

意味のない行為だと思いながらも、体が勝手に気にしてしまう。

習性、習慣は時におそろしいものだ。

 

 

さあ、ではお前はどんな時に泣きたいのか?

 

もちろん

 

喧嘩した、とか、仕事で怒られた、とか

転んで痛かった、とか、そういうので涙は出ません。

 

 

僕の場合、なんといっても涙が出る時は

感動して心震えた時です。

 

感動して心震えて流れる涙は

考えてみるととても気持ちがいいのです。

 

そして僕の場合、一番心震えるシチュエーションというのは

音楽が心に迫って来た時、というのが多い。

だから一人で音楽を聴いていて音楽と共に気持ちが盛り上がって

涙を流す、ということはある。

 

そう、つまり

 

「一人きりである」 

 

という条件の下で、僕は泣く事ができるのです。

 

 

反対に誰かがいたら涙は出ないように

もはや強制的になってしまっているので

映画館でうっかり感動した時は、ぐっと涙をこらえる。

 

「子どものように、おもいきり泣きたい」のに、だ。

そういう体になってしまっている、

残念ながら。

 

 

さて、それでタイトルに戻って

絶対に読めない絵本はこちらです。

 

 

 

 「100万回生きたねこ

 

 佐野洋子さんの代表作といってよいでしょう。

佐野洋子さんはもう亡くなっておられますが

谷川俊太郎さんの奥さんだった時期もある方です。

 

人気の絵本ですから、読まれた方も多いかと

思います。

 

さて、これがどのように絶対に読めないのか、

といいますと(ようやく本題に入ります)、

 

ある時、僕は保育園で働くおじさんでした。

おじさんは「100万回生きたねこ」の絵本なんて

読んだ事がありませんでした。

100万回生きたねこ」に興味なんてなかったのです。

 

ある時、おじさんはふと、

子どもたちに読み聞かせるため、

100万回生きたねこ」を選びました。

本の内容はまったく知りませんでした。

 

読み聞かせるうち、

絵本の後半にすすむにつれ、

 

内心

 

「やばい、やばいぞ」

 

と思っていました。

 

心が震えていました。

 

涙が出そうになりますが、

目の前には子ども達がたくさんいます。

 

僕はけんめいに涙をこらえているので

声が出ず、読み聞かせがすすみません。

こらえきれない涙が何滴か溢れたような

気がしますが、顔を横にして

咳払いでもするかのようにしながら

ふき取りました。

ずっと無言では子どもが不審に思います。

 

「やばい、やばいぞ、落ち着け落ち着け」

 

と自分を冷静になるようクールダウンさせました。

 

「子どものように、おもいきり泣きたい」

 

そう思いながら、絶対にそれが出来ない体になっている

おじさんの前には、子どもらしく泣くことが出来る

子ども達がたくさん

おはなしの続きを待っています。

 

僕はグフゥ~グフゥ~とヘロヘロになりながら、読み聞かせを終え、

ふ~っとため息をつきました。

とにかく心揺さぶられてしまったのです。

ああ疲れた、やばかったわ、というのが読了の

正直な感想でした。

 

そのような出会いの絵本だったため、

それ以降一度も子どもの前でこの絵本を

読み聞かせたことがありません。

読めないのです。

 

そういう意味で

 

絶対に読めない絵本 なのです。

 

 

自宅に置いてあれば、夜更けに一人見て涙を

流せばよいのですが、わざわざそれはしません。

不意におとずれる感動が一番好きだからです。

 

もうおはなしの筋、佐野さんのメッセージは

胸に刻まれているからです。

 

 

でもふとした時、

仕事中に本棚から手に取り、

何気なくパラパラとめくっていると

 

「あ、やっぱりいかん やばいやばい」

となってしまう… 

 

 

そういう絵本です。

まだ読まれた事がないかたは

ぜひ見てみることをおすすめします。

僕みたいな、泣けないおじさんにも

おすすめかもね~。

 

 

 なんだか、佐野さんは

「男だって泣いたっていいのよ」

と言っている気がしてきました。

 

そうなるとこのブログのタイトルは

「おとこはつらいよ」

あたりがいいかもと思ったりして…

 

おしまい

 

 

 

 

 

↑こちらは数ある谷川俊太郎さんの代表作のひとつ

大ベストセラー

「もこ もこ もこ」

 

 

#はてなインターネット文学賞