天邪鬼
最近、職場の保育園の園庭が芝生になって気持ちが良い。
天気の良いある日、子ども達とサッカーをして疲れ、フェンスにもたれて休憩をしていた。
一緒にサッカーをしていた女の子が
「今日のお迎えはおじいちゃんなんだ」
という。
彼女の家庭は、保育園におじいちゃんが迎えに来たり、お母さんが迎えに来たりする。
「毎日、今日は誰がお迎えだよ、という話をするの?」
と聞くと、
「私は曜日を覚えたから、何曜日と何曜日が誰、何曜日は誰のお迎え、というのがわかるの」
と言う。
曜日で誰がお迎えすると決まっていて、その子(5歳)は曜日の概念を覚えたというわけだ。
続けて何故だか、その子は家族の話を始める。
「どこどこのおじいちゃんは亡くなって、天国に行ったんだ」
と。
すると一緒にいた子たちが、がぜん天国話で盛り上がる。天国は空の上にある、だの、悪い奴は行けない、だの、嘘をついても行けない、だの。
嘘についてのトピックが大好物の私は、
「ああ、おれはたくさんうそをついたから、地獄行きだわ」
と言い「どんな嘘か?」という予想内の質問を受け、答える。
よくありそうな、子どもがよくついているだろう嘘とか、大人が子どもにやりがちな嘘とかを挙げた。
で、「ああ、もうダメだわ。地獄行きだわ」
と演技で嘆いた。
サッカーが終わって、ゴールを先述の女の子と2人きりで片付けた。
「地獄ってどんなところ?どこにあるの?」
って聞いてくるから、地獄行き決定で嘆いている演技モードの僕は、
「鬼とかいて、怖い人や嘘つきばかり、天国とは対照的。場所は雲の上の反対だから、地面の下じゃない?」
と答える、暗い感じで。
(内心、僕はこのやりとりをとても楽しんでいる、悪意の無い嘘として、その子には悪いけど)
その子はなんだか、すご〜く暗い顔をして下を向いて地獄を想像したように見えたんだけど、そのあとすぐに上を向いて明るい顔で僕を見てこう言ったんだ。
「地獄なんてないんじゃない?」
って。
僕は、心の中でほとんど泣いた。
「あー、なんて優しい子。地獄行き決定で嘆いている僕をかわいそうに思って、必死になんとかしようとしてくれているのかしら?それとも、地獄が怖いから、無いことにしたいのかな?」
でも僕はその時、ホントに自分でも自分が嫌になるんだけど、
「でもさ、地獄がなかったら、天国には悪い奴もいっぱい来てさ、天国も天国じゃなくなっちゃうよ。だからやっぱり地獄に行くよ。まぁ悪い奴も話せばわかるからさ、なんとかやっていくよ」
って答えた。
その子は少し難しい顔をしていたと思う。
「そうだね」
が言えないトホホな大人の私。
今日の事を思い出しながら
「そうだね」
と言える人間になりたい、
と思っている、、
でもさ、そうだね、って言うと、
俺は心の中じゃなくて、
実際に泣いちゃうんだよ。
さすがにそれはマズイんだよ。
あ〜、心おきなく泣きたいわ〜、マジで。