ショウ・スズキ フロムオキナワ

よろしくお願いします

たとえば、バイオリンを習いたい、と言った女の子がいたとします。その子の親が、そうか、バイオリンを習いたいのか、バイオリンなら悪いことがないし、この子のためにもなる、イメージもいい、よし習いなさい、とバイオリン教室に通わせたとします。バイオリンとその子の相性がよく、さらに素敵な先生との巡り合わせのおかげでバイオリンがいっそう好きになり腕をメキメキと上げ、その子の一生を影で支える自信に繋がり、良い人生を送りました。という、これはいい例です。別のパターンはこうです。子どもというのは思ったことを素直に口に出すものです。なんとな〜く軽い気持ちでバイオリンを習いたい、と言ったところ、教育熱心で子どもを愛する親が、よし素晴らしい自主性だ、と認めたおかけでバイオリン教室に通い始めます。初めは好奇心が満たされたけれど、慣れてくるうちに、先生は実は厳しくて怖いし、バイオリンは難しいしでちっとも楽しくありません。正直に親にその気持ちを話すと、親は言いました。自分で言い出したんだ。先生が厳しいのは君を思っての事だ。自分で決めた事は最後までやり通さなくてはいけないよ。それはこの世のルールなんだ。 そう言われると何も言えませんでした。やがて、少しは上手に弾けるようになってきました。けれどもそれほど楽しくありません。今では他にやりたい事がたくさんあるのだけど、バイオリンのせいで忙しくて出来ません。やめたいけれどやめられないのです。その子はある日思いました。ああ、これは生き地獄だ、と。 その女の子はやがて大人になり、ある男の人に出会います。その人は言うのです。君のバイオリンは素晴らしい。僕の心に何故か響いてきた。良ければ結婚してください。 その男の人はイケメンだし、全然悪い感じもしなかったので、2人は結果結ばれて、子どもにも恵まれて幸せに暮らしましたとさ。おしまい。